【薬剤師執筆】梅毒の症状と治療法・男女別の感染事例

梅毒は、性行為により感染する病気―性行為感染症の中でも、特に注意すべき病気の1つです。

梅毒の患者さんは昭和40年以降減少していたのですが、近年、患者数が増えつつあります。梅毒は自然に治ることはありません。

放置すると脳や心臓に症状があらわれ死亡することもありますので、必ず治療することが必要な病気です。梅毒は性行為感染症ですが、性器だけでなく、全身に症状があらわれてきます。

過去には顔がくずれるほど重症の梅毒の患者さんがいたのですが、現在は薬があるため、そこまで重症になる患者さんはみられません。

※この記事は現役薬剤師が執筆しています。

梅毒の症状の特徴

梅毒は、梅毒トレポネーマという菌に感染することによっておこる病気で、症状があらわれる顕症梅毒のほか、感染していても症状があらわれない無症候梅毒も知られています。

いったん症状があらわれても、自然に消えてしまう時期もあるため、梅毒と気づかない場合もあるでしょう。そのようなときに梅毒にかかっていることに気づかず性行為をもつと、性行為の相手にうつしてしまうことになります。

梅毒は症状がいったん消えたとしても、自然に治ることはありませんので、次に症状があらわれるときは、一段階進んだ症状があらわれることになります。

顕症梅毒の症状は特徴的で、第1期梅毒から第4期梅毒までわけることができます。男性、女性ともに同じような症状があらわれるといってよいでしょう。

 

顕症梅毒・第1期梅毒―感染してから3週間であらわれる症状

梅毒トレポネーマに感染すると、菌は血液にのって数時間で体じゅうにひろがります。

感染してから約3週間がたつと、最初に菌が入った箇所(性器のまわり、口、肛門など)に、小豆から人差し指の先ぐらいの大きさで軟骨のような硬さのしこりができてきます。

この最初のしこりは、しだいに硬く盛り上がり中心に潰瘍ができるようになります。これらのしこりができても痛みを感じることはありません。しこりは、男性では、亀頭部や包皮、女性では大小陰唇や子宮にできてきます。

性器にしこりができた後、足の付け根(リンパ節のあたり)が硬くはれてきます。このしこりも痛みはなく、人差し指の先ぐらいの大きさのものが数個できてくるのが多いようです。

性器や足の付け根のしこりは、2~3週間で自然に消えていきますので、次の段階にうつるまでは症状はありません。

第1期梅毒の症状は3週間であらわれますので、最初は検査をしても梅毒トレポネーマに感染していることがわからないことがあります。その場合は、感染のもとになったと考えられる性行為から3週間以上たってから検査を行うことが必要です。

 

顕症梅毒・第2期梅毒―感染してから3か月であらわれる症状

いったん第1期梅毒のしこりが消えても、梅毒トレポネーマに感染してから約3か月がたつと、全身の皮膚や粘膜にいろいろな症状があらわれてきます。

体や顔、手足に、淡い紅色の斑があらわれることがありますが、バラのような色の斑なので、バラ疹(ばらしん)とよばれます。そのほかの症状はなく数週間で消えていくため、見逃されることも少なくありません。

丘疹性梅毒疹といって、少しもりあがった赤褐色の発疹が出ることもあります。他の発疹との違いは、手のひらや足の裏に出てくることで、これは梅毒に特徴的な症状です。この丘疹性梅毒疹から膿をもつ膿疱性梅毒疹にかわっていくこともあります。皮膚に症状があらわれますので、アレルギーや風疹、麻疹といった皮膚の病気だと思って自分で市販の薬を使い様子をみることもあるでしょう。

そうすると、梅毒トレポネーマに対する薬が処方されないため、梅毒が次の段階にすすんでしまいます。

梅毒は必ず治療を行うことが必要で、梅毒に効く薬は医師の処方があってはじめて使うことができるものですので、梅毒にあてはまる皮膚の症状が出た場合は、医師による診断を受けることが大切です。

そのほか、梅毒性アンギーナといって、のどの扁桃を中心に赤くなったりただれたりすることもあります。また、虫食い状の脱毛といわれる梅毒性脱毛がみられることもあります。

このようないろいろな症状が3か月から3年にわたって続き、症状があらわれない無症候梅毒になっていきます。しかしながら、治療をしないと約3分の1は再発を繰り返し、第3期以降の梅毒にすすんでいくこととなります。

 

顕症梅毒・第3期梅毒―感染してから3年であらわれる症状

感染して3年以上たつと、結節や皮下組織にゴム腫ができたり、神経梅毒にすすんでいったりすることがあります。

現在は第2期までに気づき、薬で治療を行うことが多いため、このような患者さんはみられません。

 

顕症梅毒・第4期梅毒―梅毒の最終段階の症状

第3期からさらに進むと、梅毒による大動脈炎などがあらわれることがあります。

第3期梅毒と同様に、現在は第2期までに気づき、薬で治療を行うことが多いため、ここまで重症の患者さんには出会うことはありません。

 

神経梅毒の症状

顕症梅毒の第1期梅毒から第4期梅毒のいずれの段階でも、中枢神経系に梅毒トレポネーマが感染しておこる病気は神経梅毒とよびます。

第1期梅毒、第2期梅毒でおこった場合は早期神経梅毒といい、第3期以降の場合は晩期神経梅毒とよばれます。現在は第3期以降の患者さんはみられないため、晩期神経梅毒の患者さんに出会うことはないといってよいでしょう。

神経梅毒でも症状があらわれない場合がありますが、症状があらわれる場合を症候性神経梅毒といいます。症候性神経梅毒は、髄膜型(感染1年以内)、髄膜血管型(10年後以降)、実質型(20年後以降)に分けられます。

頭痛や吐き気、痙攣、意識障害、難聴などの症状は髄膜型の段階にみられるもので、髄膜血管型では中大脳動脈が損傷して脳卒中がおこり頭痛や回転性めまい、不眠症、精神の異常などがひきおこされます。さらに、実質型になると、人格が変わってしまう、知能が低下するなど特徴的な症状があらわれます。

 

先天梅毒の症状

梅毒トレポネーマに感染していた母親から生まれた子どもが先天梅毒になった場合、低体重、紫斑、黄疸などがあらわれてきますが、現在、このような患者さんはほとんどみられません。

 

HIV感染に併発した梅毒の症状

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している患者さんが梅毒である場合、梅毒トレポネーマ感染のみの場合とは異なる状態となります。HIVに感染した患者さんでは、第1期梅毒の期間が無症状であったり、第2期梅毒の症状が重症化したりするといわれています。

 

梅毒の感染原因

梅毒の原因である梅毒トレポネーマは、皮膚や粘膜の小さな傷から体内に入り、血液の流れにのって、全身にひろがり症状があらわれるようになります。

性行為により感染する場合がほとんどですので、性器から性器へと感染するといってよいでしょう。ただし、性器をさわった手に傷があったり、オーラルセックスを行ったりすると、手指や口に感染してしまいます。

アナルセックスでは肛門に感染することもあります。性行為感染症を防ぐためには性行為時にコンドームを使うことがすすめられますが、コンドームにおおわれていない部位の皮膚から感染することもあるため、コンドームによる防御は100%というわけではありません。

梅毒は性行為で感染するだけではありません。妊娠時に母親が梅毒にかかっていると胎児に感染することが知られています。この場合は生まれたときから梅毒に感染していますので先天梅毒とよばれます。

 

梅毒の治療法

第2期梅毒のバラ疹や手のひら・足の裏の丘疹性梅毒疹が梅毒に特徴的な症状ですが、梅毒トレポネーマに感染しているかどうかは、初期のしこりの表面をこすりとったものを顕微鏡で観察したり、血液検査をしたりすることで判断できます。

梅毒トレポネーマに感染していることがわかったら、梅毒トレポネーマに効く薬を使って治療します。薬が効くと梅毒トレポネーマがこわれて、39℃前後の発熱、頭痛、体のだるさ、筋肉痛、発疹が増えるなどの症状が出るようになります。これは薬の副作用というわけではありません。

梅毒の時期にあわせて十分に治療を行った後は、症状がなくなったかどうか、梅毒血清反応という血液検査の値が低くなったかどうかを確認します。6か月後と12か月後に確認しますが、治療効果が十分でない場合や再感染が考えられる場合は、再度治療を行うことになります。

梅毒の治療が終わっても、梅毒トレポネーマに対する免疫はできませんので、また感染する可能性があります。100%の防御はできませんが、他の性行為感染症と同様に、コンドームを使うといった注意は必要です。

また、性行為感染症は、性行為のパートナーと一緒に治療していきます。梅毒と診断された場合は、90日以内に性行為を行った相手に必ず伝えて、梅毒の検査を受けさせるようにしましょう。治療しなければ、体の中から梅毒の原因である梅毒トレポネーマがいなくなることはありません。

 

 顕症梅毒

第一選択はペニシリンで、合成ペニシリンよりも天然ペニシリン(ベンジルペニシリンベンザチン)のほうが有効とされています。ペニシリンにアレルギーがある場合は使えませんので、他の薬を使うことになります。薬物治療の期間は、第1期梅毒では2~4週間、第2期梅毒では4~8週間、第3期梅毒以降では8~12週間必要で、感染してから早い時期に治療を始めれば始めるほど、治療期間は短くて済みます。

ベンジルペニシリンベンザチン (商品名:バイシリンG)

1回40万単位(顆粒1 g)を1日3回飲みます。患者さんの状態にあわせて、1日4回飲むこともあります。飲んで効くペニシリンです。ペニシリンなどの抗生物質にアレルギーのある場合は使うことができません。

アモキシシリン水和物(商品名:サワシリン)

1回500 mgを1日3回飲みます。ペニシリンなどの抗生物質にアレルギーのある場合は使うことができません。

ミノサイクリン塩酸塩(商品名:ミノマイシン)

1回100 mgを1日2回飲みます。テトラサイクリン系抗生物質にアレルギーのある場合は使うことができません。

ドキシサイクリン(商品名:ビブラマイシン)

1回100 mgを1日2回飲みます。テトラサイクリン系抗生物質にアレルギーのある場合は使うことができません。

アセチルスピラマイシン(商品名:アセチルスピラマイシン)

妊婦の場合に使います。1回200 mgを1日6回飲みます。

 

神経梅毒・先天梅毒

ペニシリンを点滴で静脈内に投与します。治療は10日~2週間続けます。

◇ベンジルペニシリンカリウム(商品名:ペニシリンGカリウム)

1回200~400万単位を1日6回点滴で静脈内に投与します。ペニシリンなどの抗生物質にアレルギーがある場合は使うことができません。

 

梅毒の感染事例

梅毒トレポネーマに感染した患者さんの事例をもとに、梅毒の症状・治療・その他の注意事項について、具体的におさらいしていきましょう。

 

30歳台の男性、梅毒

【症状】

体中に淡い赤い斑がみられたため、受診した患者さんです。問診により、2か月ほど前に、性器に小さなしこりができたのですが、しばらくすると消えていたとのこと。第2期梅毒の疑いで検査を行った結果、梅毒トレポネーマに感染していることがわかり、第2期梅毒と診断されました。

【治療】

ベンジルペニシリンチザニジンが出荷調整で梅毒には使えない状況だったため、ミノサイクリン塩酸塩が1回100 mg1日2回8週間で処方されました。3か月前に性行為を行った相手がいましたが、すでに連絡がとれなくなっていたため、梅毒にかかっていたと思われる性行為の相手の治療を行うことはできませんでした。

【その他の注意事項】

医師からは梅毒はしっかり治療を行わないと治らない病気であるため、必ず続けて薬を飲むよう指示がありました。性行為により相手にうつるので、治るまで性行為は控えるようにいわれました。また、3か月前に性行為を行った相手以外に、性行為を行うパートナーがいる場合は、その人も梅毒の検査をする必要があるため、一緒に受診するように指導されました。

 

20歳台の女性、梅毒

【症状】

性器のあたりに複数のしこりができたことに気づき、受診した患者さんです。性行為の相手は夫のみです。検査を行った結果、梅毒トレポネーマに感染していることがわかり、第1期梅毒と診断されました。

【治療】

医師の問診時に妊娠していることがわかったため、アセチルスピラマイシン1回200 mg1日6回4週間分が処方されました。

【その他の注意事項】

性行為の相手は夫であるため、夫も梅毒の検査をうけるように指示がありました。

妊婦が梅毒トレポネーマに感染していると、母子感染により胎児に感染する危険性があるため、医師からは、必ずしっかりと薬を飲むよう指示がありました。

参考文献

  • 性感染症 診断・治療ガイドライン2016(日本性感染症学会)
  • 各医薬品添付文書

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