【薬剤師執筆】B型肝炎の症状と治療法・男女別の感染事例

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が感染して、肝臓の炎症(肝炎)をひきおこす病気です。

HBVは性行為により感染し、また、出産時に母子感染することも知られています。

成人の場合は、感染しても急性肝炎はおさまることが多いのですが、HBVのタイプによっては慢性肝炎になることもあります。

慢性肝炎になると、肝硬変や肝がんに進展することもあるため、B型肝炎ワクチンやコンドームの使用などで感染を予防することが大切です。

B型肝炎の症状の特徴

B型肝炎は、HBVが感染することでおこる肝臓の炎症で、肝臓の働き(いらないものを体の外に出すために加工するなど)が弱まり、体がだるくなったり、症状が悪化すると意識がなくなったりすることもあります。

HBVによる病気といっても、HBV自体が肝臓に炎症をおこすのが主な原因ではありません。

HBVが感染した肝臓の細胞を、自分の免疫の働きが攻撃するため、肝臓に炎症がおこると考えるとよいでしょう。

肝臓におこる症状ですので、特に男女で症状に差があるわけではなく、同じような経過をたどります。

成人で感染した場合と、新生児や乳幼児が感染した場合では、その後の経過が異なります。

 

成人が感染した場合

性行為により感染すると、2~6週間でHBs抗原が検出できるようになります。

HBVは球形の粒子のようなもので、いちばん外側にHBs抗原、その内側にHBc抗原、さらに芯の部分にHBe抗原があります。このHBVのいちばん外側にあるHBs抗原が最初に検出されてきます。

HBs抗原が検出されてから2~3週間遅れて血清GPT(ALT)値という肝臓の炎症を示す検査値が上昇します。

この上昇がピークになるころには、倦怠感、食欲不振、赤褐色尿などの症状があらわれてきます。HBVに感染しても、このような急性肝炎と診断されるのは約3分の1で、急性肝炎の症状があらわれても、多くの場合、自然に症状は軽くなっていくといってよいでしょう。回復するころには体の中にHBs抗原を中和するHBs抗体ができています。

ただし、1%以下ですが劇症化して劇症肝炎になると、急激に肝臓の細胞が死んでしまうため肝臓が萎縮し、黄疸や消化管出血、昏睡があらわれてきます。

劇症肝炎の死亡率は70%ともいわれていますので、命にかかわる状態になるといえます。

 

新生児や乳幼児が感染した場合

出産時に母から新生児にHBVが感染(母子感染)、あるいは乳幼児期にHBVに感染すると、自分の免疫の働きが未発達のため、9割以上で持続感染の状態となります。

そのうち9割では肝炎は発症しないもののHBVキャリア(HBVを体の中にもっている状態)になり、残りの1割では、慢性肝炎が続き、年率2%の割合で肝硬変となり、さらに肝がん、肝不全と進展していきます。

 

B型肝炎の感染原因

HBVは血液や体液を介して感染します。ですから性行為によって感染しますが、コンドームを使うことで感染を予防することができます。

特に覚えておきたいのは、HBVにはB型肝炎ワクチンがあるため、予防ができるということです。

また、妊婦がHBVに感染している場合には、何もしなければ、出産時に子どもに感染することになります。この場合も、感染は薬で防ぐことができますので、次にご紹介しましょう。

 

B型肝炎の治療法

まず予防についてですが、妊婦がHBVに感染している場合は、母子感染を防ぐために、B型肝炎予防薬(抗HBs人免疫グロブリン、B型肝炎ワクチン)を使います。

性行為のパートナーがHBVに感染している場合は、あらかじめB型肝炎ワクチンを接種することで、感染を予防することができます。

治療については、成人ではB型肝炎になっても自然によくなるので、経過観察を行います。

HBVに感染したことがわかった場合には、性行為のパートナーもHBVキャリアである可能性が高いため、性行為のパートナーにも受診をすすめるようにしましょう。

HBVに感染して急性肝炎がおきたとしても、治ったあとは抗体ができているため、再度感染することはないといわれています。

なお、特に劇症化の心配がある場合には、命にかかわりますので、抗ウイルス薬を使って治療を行います。

 

B型肝炎予防薬

◇抗HBs人免疫グロブリン(商品名:抗HBs人免疫グロブリン)

母子感染の予防に、B型肝炎ワクチンと一緒に使います。

生後12時間以内に初回注射として0.5~1.0 mLを筋肉内に注射します。

追加注射をする場合は、体重1 kgあたり0.16~0.24 mLを注射します。

◇B型肝炎ワクチン(商品名:ビームゲン、ヘプタバックス-Ⅱ)

成人のB型肝炎の予防には、0.5 mLを4週間隔で2回、さらに20~24週たってからもう1回、皮下あるいは筋肉内に注射します。

母子感染の予防には、抗HBsヒト免疫グロブリンと一緒に使います。

0.25 mLを1回、生後12時間以内に皮下に注射し、さらに1か月後と6か月後の2回、0.25 mLを皮下に注射します。

ワクチンを接種することで、HBVに対する抗体ができ、HBVに感染しにくくなります。

 

B型肝炎治療薬

HBVの治療には、インターフェロン製剤と抗ウイルス薬が使われています。

これらの薬には使用期間や副作用など、大きな違いがありますので、順番に見ていきましょう。

 

インターフェロン製剤

インターフェロン製剤は、B型慢性活動性肝炎に使われます。HBVの増殖を抑えるとともに、抗ウイルス作用や免疫を強める作用がありますが、さまざまな副作用があらわれることが知られています。インフルエンザ様症状が最もよく見られる副作用で、全身がだるくなる、発熱、頭痛、関節が痛くなるといった症状が60~95%の患者さんで見られます。また、うつ病・自殺を企てるような精神症状や、息苦しくなる間質性肺炎といった副作用が出ることがあるため、症状があらわれた場合にはすぐに医師などに相談することが必要です。

◇インターフェロンアルファ (商品名:スミフェロン)

毎日、300万~600万単位を皮下あるいは筋肉内に注射する薬です。

使う期間は4週間が基本とされています。

◇インターフェロンアルファ-2b(商品名:イントロンA)

毎日、筋肉内に注射する薬で、初日に1回300万単位あるいは600万単位、次の6日間は1日1回600万~1000万単位、2週目から1日1回600万単位を使います。

使う期間は4週間が基本とされています。

◇インターフェロンベータ (商品名:フエロン)

静脈内に注射あるいは点滴する薬です。初日に1回300万単位、次の6日間は1回300万単位を1日1~2回、次の日からは1回300万単位を1日1回使いますが、

使う期間は4週間が基本とされています。

◇ペグインターフェロンアルファ-2a(商品名:ペガシス)

インターフェロンアルファ-2aにポリエチレングリコール(PEG、ペグ)を結合させて、長く作用が続くようにつくった薬です。

ペグがついていないインターフェロンでは毎日注射することが必要でしたが、ペグインターフェロンアルファ-2aは、週1回、皮下に注射することで、HBVが増えるのを抑えたり、体がHBVを排除しようとするのを助けたりします。

標準的には48週間使います。使い始めには、副作用が出ていないかを確認するために、最初の週は週2回以上、その後2か月間までは毎週、その後は4週間に1回血液検査をすることとされています。

 

抗ウイルス薬

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の治療のためにつくられてきた薬に、HBVの増殖も抑えることがわかったことから、次第に同じ働きをもつB型肝炎に使う抗ウイルス薬がつくられるようになりました。

短期的な副作用はほとんどありませんが、投与をやめるとぶりかえして症状が悪化するため、長い間、飲み続けることが必要な薬です。言い換えれば、自分の判断で飲むのをやめてはいけない薬といえるでしょう。

なお、HBVとHIVの両方に感染している場合には、抗ウイルス薬を1種類だけ使うのでは、薬が効かないHIVができやすくなることが知られています。

現在、HIVは薬でコントロールすれば、死に至る病気とおそれられていたAIDSの状態にならずに長く生きられるようになりました。

そのため、HIVに感染しているかどうかを確認し、HBVとHIVの両方に感染している場合は、1種類だけの薬ではなく、複数の抗HIV薬を確実に使うようにします。

◇ラミブジン(商品名:ゼフィックス)

1日1回100 mgを飲む薬です。もともとHIV感染症の治療薬としてつくられました。HBVが増殖し肝機能異常が確認されたB型慢性肝疾患に使うと、HBVの増殖を抑えます。

症状が出ていないHBVキャリアや肝機能が正常範囲にある患者さんには使いません。

また、長く使うと、高い確率で薬が効かないHBVができてきますので、抗ウイルス薬を使う場合に、最初に用いられることはなくなりました。

◇アデホビル ピボキシル(商品名:ヘプセラ)

1日1回10 mgを飲む薬です。HBVが増殖し肝機能異常が確認されたB型慢性肝疾患に使う薬で、HBVの増殖を抑えます。

症状が出ていないHBVキャリアや肝機能が正常範囲にある患者さんには使いません。ラミブジンが効かなくなったHBVにも効くことがわかっています。

その場合には、ラミブジンとアデホビルを一緒に使うようにします。

ただし、アデホビル ピボキシルを長期に使った場合に、効かないHBVが出てくる可能性は否定できません。

◇エンテカビル水和物(商品名:バラクルード)

1日1回0.5 mgを飲む薬です。HBVが増殖し肝機能異常が確認されたB型慢性肝疾患に使う薬で、HBVの増殖を抑えます。

症状が出ていないHBVキャリアや肝機能が正常範囲にある患者さんには使いません。空腹時のほうが効くため、食後2時間以降で次の食事より2時間以上前に飲むようにします。

薬が効かないHBVができにくいため、抗ウイルス薬を使うときには、いちばん最初に選ばれる薬です。

なお、催奇形性の心配がありますので、妊娠の可能性がある女性に長く使うにはふさわしくない薬といえるでしょう。使う場合は、避妊することが必要です。

◇テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(商品名:テノゼット)

1日1回300 mgを飲む薬です。HBVが増殖し肝機能異常が確認されたB型慢性肝疾患に使う薬で、HBVの増殖を抑えます。

症状が出ていないHBVキャリアや肝機能が正常範囲にある患者さんには使いません。腎機能が悪くなると薬が体にたまりやすくなるので、使う量は腎機能にあわせて決められます。

また薬を飲んでいる間は腎機能への影響に気をつけることが必要なため、顔がむくむ、尿量が減る、眼がはれぼったいなどの症状が出た場合は医師に相談するようにします。

長く使うと骨密度にも影響があらわれ骨折をおこすことがあるため、定期的に骨密度の検査を行って注意するようにします。

◇テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(商品名:ベムリディ)

1日1回25 mgを飲む薬です。肝細胞に取り込まれてからテノホビルに変わる薬のため、使う量が少なくて済むのが特長です。

HBVが増殖し肝機能異常が確認されたB型慢性肝疾患に使う薬で、HBVの増殖を抑えます。

飲んでいる間は腎機能検査を行うことが必要です。また骨密度の検査も行うようにします。

 

B型肝の感染事例

B型肝炎に感染した患者さんの事例をもとに、B型肝炎の症状・治療・その他の注意事項について、具体的におさらいしていきましょう。

 

30歳代の女性

【症状】

全身がだるく診療所で受診したところ、黄疸も見られ、急性肝炎の疑いで病院を紹介されました。GPT(ALT)と黄疸の指標であるビリルビン値が高く、HBs抗原も検出されたため、B型急性肝炎の疑いで、受診当日に入院した患者さんです。

【治療】

急性肝炎の原因がHBVしか考えられず、HBVによる急性肝炎と診断されました。1週間ほど様子をみましたが、全身のだるさはよくならず、ビリルビン値や他の検査値が悪化し劇症化の可能性が出てきたため、入院3週間がたったころから抗ウイルス薬の治療を開始しました。さらに1か月間、抗ウイルス薬を飲み、肝機能や全身状態がよくなったため、退院となりました。抗ウイルス薬をさらに3か月間飲んだところで、HBs抗原は検出されなくなり、さらに2か月後にHBs抗体が検出できたため抗ウイルス薬は終了しました。その後は再発することなく経過しています。

【その他の注意事項】

医師からは、慢性化はしなかったものの、HBVが肝臓で増殖することがあるので、献血はしないようにと指導されました。

 

20歳代の女性

【症状】

妊娠10週で、妊婦健康診査で、HBs抗原が検出された患者さんです。

【治療】

HBVに感染しているため、母子感染することから、子どもへの予防が必要になりました。出生後12時間以内に子どもに抗HBs人免疫グロブリンを投与してHBs抗体でHBVを中和すること、さらにB型肝炎ワクチンを出生時、生後1か月、生後6か月の3回投与することになりました。

【その他の注意事項】

子どもは自分の免疫が十分にできていないため、抗HBs人免疫グロブリンやB型肝炎ワクチンを投与しないと、HBVが持続感染して、慢性肝炎から肝硬変や肝がん、肝不全に進展する場合もあるため、確実に投与を受けるよう指導されました。

 

参考文献

  • 性感染症 診断・治療ガイドライン2016(日本性感染症学会)
  • B型肝炎治療ガイドライン(第3版)(日本肝臓学会)
  • 各医薬品添付文書

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