【薬剤師執筆】尖圭コンジローマの症状と治療法・男女別の感染事例

性行為によって感染する病気―性行為感染症のなかでも、見てわかる特徴的なイボが出てくるのが「尖圭コンジローマ」です。

ウイルスが感染することにより引き起こされる病気で、感染してもすぐには症状があらわれません。しばらくたつとできてくるイボの形は特徴的で、しだいに大きく数も増えてきます。

また、感染をほうっておいた場合には、陰茎がんや子宮頸がんの発症にもかかわりがあるといわれています。尖圭コンジローマとわかったらすぐに治療するようにしましょう。

尖圭コンジローマの症状の特徴

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス)が感染することによっておこる病気です。ヒトパピローマウイルスには180以上の種類があるのですが、そのうち良性型のウイルスにより尖圭コンジローマは引き起こされます。手足にできるイボも他の種類の良性型のヒトパピローマウイルスによるものです。

ところがヒトパピローマウイルスには悪性型のものもあり、尖圭コンジローマの原因のヒトパピローマウイルスと一緒に感染していることがあります。悪性型のヒトパピローマウイルスに感染していた場合、ほうっておくと、男性では陰茎がんに、女性では子宮頸がんになる可能性があります。

男性、女性とも、ヒトパピローマウイルスに感染しても、症状はすぐにはあらわれません。感染してから3週間から8か月がたつと、ウイルスの名前にある「乳頭」(乳首)の形のイボ(色は淡い赤色あるいは褐色)があらわれてくるため、自分で異変に気づくようになります。さらに「鶏のトサカ」や「カリフラワー」のような特徴的なイボもできてくるようになります。場合によっては、かゆみや痛みを感じることもあります。

ヒトパピローマウイルスは免疫の働きが弱くなっていると、発症することが知られています。他の病気で免疫を抑える薬を使っている患者さん、糖尿病の患者さん、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している患者さんなどでは免疫が弱まっているため、尖圭コンジローマが発症しやすく治りにくく再発しやすいことは覚えておきましょう。

 

男性器の症状

男性では、尖圭コンジローマの原因のヒトパピローマウイルスが感染するのは、亀頭の尖端から陰嚢、肛門にいたるまで、性器のまわりの広い範囲です。感染は性器のまわりの皮膚だけでなく、尿道や肛門の中にまで及びます。

感染しても急に症状を感じることはありませんが、しばらくすると、尖圭コンジローマに特徴的なイボができてきます。特に包茎で亀頭のまわりの包皮の内側に感染している場合には、包皮の内側にもイボができてきます。

 

女性器の症状

女性では、大小陰唇から膣、肛門にいたるまで、性器のまわりの広い範囲に症状が出てくるようになります。

性器のまわりの皮膚だけでなく、尿道や膣、肛門の中にも感染します。症状は感染してすぐにはあらわれてきませんが、しばらくすると、尖圭コンジローマに特徴的なイボができてきます。膣の中にまでヒトパピローマウイルスが感染している場合は、膣の中にもイボができてきます。

 

尖圭コンジローマの感染原因

性行為の相手がヒトパピローマウイルスに感染していた場合、感染部位や感染部位からはがれた皮膚などが、自分の皮膚や粘膜のとても小さな傷にふれるだけで、ヒトパピローマウイルスは侵入してきます。感染してもすぐには症状があらわれないため、性器の外観は通常と変わらず、性行為の相手が感染していることに気づかないことも多いでしょう。

また、感染している人では、性器のまわりの広い範囲にヒトパピローマウイルスが存在しているかもしれませんので、コンドームを用いて性行為を行ったからといって、感染を防ぐことができるとは限らないことに注意が必要です。性行為の相手が感染しているとわかったら、一緒に治療するだけでなく、治療が終わるまでは性行為を避けることも、ピンポン感染(感染がいったりきたりする)を防ぐためには取り組みたいことです。

そのほか、ヒトパピローマウイルスに感染している妊婦が子どもを生んだときには、生まれてきた子どもに感染してしまうことがあります。子どもに感染すると、尖圭コンジローマだけでなく、のどにイボができる多発性咽頭乳頭腫による呼吸困難をまれに起こすこともあるため、問題となっています。

 

尖圭コンジローマの治療法

尖圭コンジローマに対しては、イボの大きさや数によって、治療方法を選びます。イボが数mmで少ない場合には、薬物療法や凍結療法で対応が可能ですが、イボが1cm超、数が多いなどの場合には、薬物療法だけでなく、外科的療法によりイボを切り取ることも行われています。

いずれの治療法も単独では治せるのは患者さんの60~90%程度です。治りにくい場合は、2つ以上の治療法を組み合わせていきます。イボを取り去ったとしても、ヒトパピローマウイルスが残っていると、また再発してくる可能性がないとはいえません。再発した場合もこれらの治療法を根気よく続けていくようになるでしょう。

性行為感染症である尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスの感染に気づかずに性行為をしてしまうことで、他の人に感染がひろがっていきます。患者さん本人だけでなく、性行為の相手も一緒に治療することが必要な病気です。

自分は治っても、性行為の相手が感染したままでは、また相手から感染してしまうおそれがあります。感染しているとわかったら、性行為の相手にも知らせて、一緒に治療を受けるようにしましょう。

 

薬物療法

尖圭コンジローマに効果があるイミキモドという薬(皮膚に塗るクリーム状の薬)が使われています。

イミキモド(商品名:ベセルナ)

薬の作用

イミキモドは、ヒトパピローマウイルスが増えるのを抑えるとともに、ヒトパピローマウイルスに感染した細胞を倒す働きをもっています。イミキモドを使うことで60%以上の患者さんでイボを完全になくすことができたという試験結果があります。

薬の使い方

薬物療法は、凍結療法や外科的療法とは異なり、自分で薬を塗ることができるのが利点ですが、イミキモドの作用は強いため、使い方に注意が必要です。

まず使えるのは性器のまわりの皮膚に限られ、粘膜には使うことができません。男性でいうと尿道や肛門内には使えず、女性では尿道や肛門内に加えて膣内にも使うことができません。皮膚に対して使う場合でも、使えるのは1週間に3日のみ(たとえば、月・水・金あるいは火・木・土のように1日おきに使う)です。イミキモドを塗ってから6~10時間後には石けんで洗い流すようにしましょう。

イボがなくなるまでには時間がかかりますが、薬の使いすぎは皮膚に副作用(皮膚が赤くなる、皮膚がただれる、皮膚がはがれる、痛みなど)があらわれやすくなるため、あせらず適切な使い方をすることをおすすめします。具体的な使い方は次のとおりです。

  1. 1回に1パックを開封し必要な分の薬を使いますが、残ったものは次回使わないようにします。
  2. 寝る前に指先に薬をとり、イボの部分にだけ薄く塗ります。イボが見えづらくて塗りにくい場合には、手鏡を使って見るなど工夫しましょう。
  3. クリームが見えなくなるまで、イボにすり込みます。イボは絆創膏などでおおってはいけません。
  4. 塗ったあとは、必ず指先を石けんでよく洗います。
  5. クリームを塗ったまま、6~10時間はそのままにします。
  6. 6~10時間後に、石けんを使って水または温水でよく洗い流します。男性で包皮の内側のイボを治療している場合は、包皮をめくって内側までよく洗うようにします。

このように使用して副作用で中止することがなければ、16週間は継続して使うことができます。

その他の注意事項

そのほか気をつけたいこととして、次のようなことがあります。

  1. 寒気・吐き気・筋肉痛などインフルエンザのような症状が出ることがありますので、その場合には、すぐに医師に連絡しましょう。
  2. 女性では、尿道の近くや膣の近くに塗ると、痛みやはれが出て、尿が出づらくなることがあるため、薬を塗るときにはイボだけに塗るように注意しましょう。
  3. 男性では、包皮内のイボを治療するときには、毎日包皮を反転させて洗い、清潔を保つようにしましょう。
  4. 性行為の相手に薬がついてしまうと、皮膚がただれたりすることがありますので、薬を塗って性行為をするのはやめましょう。
  5. コンドームなどのゴム製品の品質を劣化させるため、薬を塗った部分にコンドームが触れないようにしましょう。

 

凍結療法

液体窒素(-196℃)を綿棒に含ませてイボに何度か数秒間、イボが白くなるまで押し当てて、イボを凍結させて取り除く方法です。

痛みはあっても局所麻酔が必要なほどではありません。イボが大きい場合は凍結療法では取り除くことはできず、イボが小さい段階でも治療には数週間かかります。

 

外科的療法

イボが大きい場合には、レーザー光線で取り除く、電気メスやはさみで切除するといった外科的な治療が行われます。

これらの場合には麻酔はするものの皮膚を傷つける治療のため、痛みが出ることや傷が残る可能性はないとはいえません。なお、薬を使うことができない膣内にイボができた場合も外科的療法が選ばれます。

 

尖圭コンジローマの感染事例

ヒトパピローマウイルスに感染した患者さんの事例をもとに、尖圭コンジローマの症状・治療・その他の注意事項について、具体的におさらいしていきましょう。

 

20歳台の独身女性、尖圭コンジローマ

症状

性器のまわりに違和感があるので医師にかかった患者さんです。

違和感は2か月前から気になっていましたが、かゆみや痛みはありません。大小陰唇に盛り上がったイボが複数見られました。

治療

医師は患部の組織をとって検査を行い、尖圭コンジローマと診断しました。医師からは、違和感があった2か月前に発症しているため、感染したのはそれより3週間~8か月は前のことであると説明がありました。患者さんが、その期間に性行為をした相手は一人だけでしたが、すでに連絡がとれなくなっていたため、治療は患者さん本人のみに行うにとどまりました。

治療はイミキモドクリームという薬を使うように医師から説明がありました。イミキモドクリームは、1日1回、週3回(火・木・土)、寝る前にイボの部分にのみ塗り、朝起きたら石けんを使って水か温水で洗い流すよう指示があり、薬が渡されました。

その他の注意事項

医師は薬を使用しているときは、性行為の相手に薬がつくと、相手の皮膚がただれてしまうおそれがあるため、性行為を避けるように説明しました。

また、薬を使用しているときにコンドームを使うとコンドームの品質を劣化させ、避妊の役目を果たさなくなることも注意しました。また、薬を使ってイボがなくなったとしても、再発しないかは3か月ほど様子を見ることが必要なので、その間は性行為を避けることをすすめました。

 

20歳台の既婚女性、尖圭コンジローマ

症状

子宮頸がん検診を受けたところ、性器のまわりの皮膚にイボがあることがわかりました。

淡赤色で鶏のトサカの形のイボができていて、小陰唇から肛門のまわりの皮膚にまでひろがっていました。かゆみや痛みはありません。性行為の相手は夫のみという患者さんです。

治療

医師は特徴的なイボがあることと、性行為の経験から、尖圭コンジローマと診断しました。治療は薬物療法が選ばれ、イミキモドクリームを、1日1回、週3回(月・水・金)、寝る前にイボの部分にのみ塗り、朝起きたら石けんを使って水か温水で洗い流すようにという指示とともに薬が処方されました。

感染箇所が広いといっても、性器のまわりすべてに薬を塗ってしまうと薬が尿道にまでついてしまい尿の出が悪くなるおそれがあるので、イボにピンポイントで塗るように医師から指導されました。

その他の注意事項

医師は、尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルスの感染によるものなので、自分だけでなく、性行為の相手も一緒に治療することが必要と説明しました。夫も検査を受けた結果、ヒトパピローマウイルスに感染していることがわかり尖圭コンジローマも発症していましたので、一緒に治療をすることになりました。

女性の患部は広い範囲に及んでいましたので、コンドームを使っても相手への感染は防げないこと、夫とのピンポン感染を防ぐため夫婦ともに治るまでは性行為を避けるよう医師は指導しました。

また妊娠を希望していることから、尖圭コンジローマにかかったまま妊娠すると、分娩の過程で生まれてくる子供にもヒトパピローマウイルスが感染してしまうおそれがあるため、医師はいましっかり治すことをすすめました。

参考文献

  • 性感染症 診断・治療ガイドライン2016(日本性感染症学会)
  • ベセルナ医薬品添付文書

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です