精力増強に効果がある代表的な生薬

精力増強に効果がある代表的な生薬
続いては、精力剤によく使用される生薬(天然に存在する薬効を持つ産物をそのまま利用したもの)です。

マカ

南米のペルーに生息するアブラナ科の植物であり、根が精力増強の生薬として利用されます。

アミノ酸をバランスよく含み、代謝に関係するビタミンB群やカルシウム、鉄、亜鉛といったミネラルが豊富な食品として、インカ帝国時代から食用として栽培されていたそうです。

マカが精力剤として注目を集めるようになったのは、亜鉛の含有量が豊富に含まれていることによると考えられます

亜鉛は男性ホルモンであるテストステロンの合成と分泌を促すミネラルであり、テストステロンの合成能力が低下し始める中高年にとっては重要なミネラルの一つです。

亜鉛は魚介類から摂るのが最も効率的ですが、植物原料から摂取するとなるとマカはかなり上位に位置する食材です

マカを栽培・収穫した後の土地では数年間は何も育たないと言われるほど土壌の栄養素を吸収し尽くす植物であり、土の中に含まれている亜鉛を高濃度に吸収しているということかもしれません。

また、アミノ酸がバランスよく配合されており、勃起力の増大に有用なアルギニンも多く含まれているというのも重要視されています。

マカの注目成分は亜鉛とアルギニンですが、フィトケミカルであるアルカロイドによる下半身の血流アップ効果も勃起力の改善と維持が期待できますし、他のアミノ酸やビタミンB群が低下している代謝機能を改善することによる滋養強壮・疲労回復効果も期待できます。

 

クラチャイダム


タイが原産のショウガ科ケンペリア属の植物であり、タイでは誰もが知っている1,000年以上の歴史のある民間伝承薬の一つです。

クラチャイダムという名前は聞きなれないかもしれませんが、漢方でも使用される生姜が黒くなっていることから、日本では黒ショウガや黒ウコン、あるいは、ブラックジンジャーとも呼ばれることがあるようです。

近年ではマカの人気が低下気味で、精力効果がマカを超えると言われるクラチャイダムを配合した精力剤を眼にすることが多くなっています

クラチャイダムはマカに変わる精力剤の素材として期待されていますのでマカと成分比較されることが多いのですが、アルギニンとアスパラギン酸がマカの2倍というのが特徴的です。

アスパラギン酸は体内の糖代謝を促進しエネルギーに変換する働きのあるアミノ酸であり、アスパラギン酸の摂取は疲労回復による滋養強壮効果も期待できます。

アルギニンの効果については先にお示しした通りですが、アルギニンやシトルリンを直接摂取した方がクラチャイダムやマカより効果的であるという考え方もあります。

しかし、他の含有成分による複合的な効果を考えると、総合的な精力剤としての効果が得られることも大きなメリットと考えることが出来ます。

黒ショウガと呼ばれるように黒い色が特徴ですが、黒い色のもととなっているのはアントシアニン系のポリフェノールであり、高濃度に含まれていることに由来しています

抗酸化活性の高いアントシアニンは、活性酸素による血中コレステロールの過酸化を抑制することでメタボリックシンドロームに対して有効な成分です。

また、ポリフェノールによる効果に加えてショウガ特有の血流改善効果もありますのでそれだけでも勃起力の改善効果が期待できるというわけですが、クラチャダイムには勃起不全に対する直接的な効果もあるということが検証されています。

クラチャダイムの勃起不全に対する有効性について実験した結果については、原料を生産しているオリザ油化株式会社による研究成果が公開されています。

報告されている成果の一つが、クラチャイダム(黒ショウガ)エキスによる血管内皮細胞の一酸化窒素の合成促進効果です。

細胞は臍帯静脈内皮細胞が使用され、クラチャイダムエキスによって細胞内の一酸化窒素合成酵素のmRNAが誘導され一酸化窒素の合成が促進されるということです。

一酸化窒素の量が増加することで血管拡張が起こり、海綿体への血液の流入が促進されるということになります。

もう一つの研究結果が、クラチャイダムエキスに含まれるフラボノイド類にホスホジエステラーゼ5の抑制作用が確認されています。

特に、5,7-ジメトキシフラボンや3,5,7-トリメトキシフラボンなどに強い抑制効果が認められているということです。

ホスホジエステラーゼ5の抑制は、バイアグラに代表される勃起不全治療薬の作用メカニズムと同じということです。

 

ムイラプアマ


南米ブラジルのアマゾン川流域の湿地帯に生息するボロボロノキ科の低木の植物です。

ムイラプアマは捨てるところが無いというほど利用されている生薬であり、ジャスミンに似た花の匂いがあるハーブとしても利用されています。

日本では根の部分は医薬品として登録されていますので、サプリメントとしては樹皮が利用されている、すなわち、医薬品と健康食品の二種類が存在する生薬ということになります。

第二類医薬品である大正製薬株式会社の滋養強壮ドリンクのゼナシリーズにも配合されていますが、単独で精力剤とされているものは見つけることが出来ませんでした。

ちなみに、ゼナには漢方生薬として紹介されている精力増強効果が期待される成分が多種類含まれていますが、効用は「☆滋養強壮 ☆虚弱体質 ☆肉体疲労・発熱性消耗性疾患・食欲不振・病中病後・栄養障害・妊娠授乳期などの場合の栄養補給」とされており、精力増強や陰萎に対する効果は記載されていません。

しかし、現地で伝承されている効果としては、強い催淫性と強精作用だけでなく、心臓を中心とする臓器の機能回復や筋力回復などにも有効であると言われています

日本よりも海外の方がムイラプアマの強精効果に対するに注目度が高く、被験者の60%以上に性欲増進効果が確認されたという報告もあります。

効果の中心として注目されている成分がムイラプアミンと呼ばれている物質だそうですが、現在のところ詳細は不明です。

他にも、インドール系アルカロイドなどの植物由来の生理活性物質が含まれているということですので、解明されていない成分やメカニズムも存在しているのかもしれません。

 

アシュワガンダ


インド発祥の強精効果のある生薬が、アシュワガンダと呼ばれるナス科に属する植物です。

常緑樹ですので、葉は一年中手に入れることが出来ます。

伝統医療と言えば中国医療が有名ですが、インドには中国と並ぶ伝統のあるアーユルヴェーダという伝承医学があります。

アシュワガンダの名前の由来は馬並みの力を得られるということだそうで、アーユルヴェーダにおける代表的な滋養強壮・強精効果がある生薬の一つです。

近年は日本でも栽培され、ハーブ茶として利用されたりサプリメントとして利用されたりすることもあります。

Withania somnifera Dunalというのが学名ですが、この中の「somnifera」というのはアシュワガンダの持つ睡眠導入効果から来ています。

アシュワガンダに含まれるジンノセサイドというサポニンの一種が、自律神経に作用してリラックス効果を与えてくれます。

アシュワガンダは抗ストレス効果、抗肉体疲労効果のある生薬として利用されるアダプトゲンを代表するハーブの一つであり、東洋医学では朝鮮人参と並ぶ存在です。

残念ながら科学的な根拠というのはあまり報告されていませんが、抗ストレスによる鎮静効果だけでなく、体力増強、疲労回復、免疫賦活などの滋養強壮効果が伝えられています。

抗ストレスと疲労回復という作用が強精効果につながるということで、強制剤として他の成分と合わせて使われることが多いということになります。

実際に、経験的に伝えられている効果にはスタミナ増強などもあり、若返りの妙薬としてアンチエイジング効果も期待されています。

フィトケミカルとしてよく登場するアルカロイド類やミネラルも豊富に含まれているということですので、未解明の成分も含まれているのかもしれません。

 

ヨヒンビン


ヨヒンビンは中央アフリカに生息するアカネ科のヨヒンベという植物から発見され、この植物特有の成分です。

アメリカでは樹皮に含まれるアルカロイドであるヨヒンビンが勃起不全の治療薬として承認されており、日本では大東製薬工業株式会社が「ガラナポーン」、日本新薬株式会社の「ハンビロン」、松田薬品工業株式会社の「ストルピンMカプセル」という商品名の医薬品として販売されています。

これらの医薬品は加齢に伴う勃起力の低下、正常な射精が出来ない、あるいは自信喪失によって勃起しない場合や勃起が持続しないようなケースに有効であるとされています。

ちなみに、ヨヒンビンを含む医薬品は劇薬であり、薬剤師との対面販売が義務付けられているよう要指導医薬品です。

1943年に化学構造が明らかにされ合成経路も分かっていますし、ヨヒンビンの血管に及ぼす作用機序も判明していますが、催淫剤や勃起不全薬としての効果について完全解明されているというわけではありません。

さて、ヨヒンビンがアドレナリン受容体に先に結合することによって、アドレナリンが結合できなくする働きがあります。

アドレナリン受容体には血管を拡張させるα1受容体と収縮させるα2受容体があり、ヨヒンビンはα2受容体との親和性が高い物質です。

言い換えると、海綿体における血管を収縮させるα2受容体を機能しないようにすることで、血管が収縮する、すなわち、勃起を抑えることを防ぐ効果があると考えられています。

少しわかりにくいかもしれませんが、ヨヒンビンを含有する医薬品を販売している大東製薬工業株式会社のサイトで分かりやすく説明されています。

それによると、ヨヒンビンは勃起をなえさせるブレーキであるα2受容体の機能を止め、勃起を促すアクセルであるα1受容体が優位に活動するようにする成分であるということです。

さらに、中枢神経において性欲の抑制に働くと考えられているセロトニンの受容体にも作用することから、催淫剤としての効果があるとも考えられています。

ただし、以上の内容は推測も多く、催淫作用や勃起力の向上や維持に対する効果については、科学的根拠が不十分であるというのが現状です。

血管の拡張と収縮に関与するヨヒンビンは、陰茎海綿体では勃起力の向上と維持に貢献する可能性がある物質ですが、それ以外の場所で作用すると使用量によって血圧が上昇したり低下したりするという副作用があります。

特に、効果があるからといって飲みすぎて血液中の濃度が高濃度になると、α1受容体の活動が遮断され急激に危険なレベルまで血圧が低下する恐れがあります。

効果が大きい分だけ危険も大きく、このことが劇薬として認識されている所以です。